海にかえる道

考えるだけ無駄なこと、とことん考えてみる。日々の覚書。

暴れスワン

先日、井の頭恩賜公園を訪れた。2月とは思えない暖かな日で、大変なお散歩日和であった…というのも結果論である。

 

実は前夜に吉祥寺のカフェを何十件と調べ目星をつけていたのだが、どこも満席。

ネット社会はみんな見てるサイトが同じなんだろう。考えていることが同じ。なかよしこよし。

 

どの店に対しても待つほどの熱意は持ち合わせておらず、暇を持て余した私と友人は、のたのたと井の頭恩賜公園へと向かった。

 

(ここまで食べログっぽい)

 

 

カフェでおしゃれ紅茶をいただくつもりの口でいたが、公園についた頃には普通に自販機のジュースが美味しそうに見えた。(小学生の頃、公園で遊びまくったあとに飲む炭酸が格別であったことを思い出す)

 

池が見えると私と友達の足は自然と早くなった。童心むき出しの私たちは満場一致でスワンボートに乗ることに決定。

 

 

 

スワンちゃんを乗りこなすのは想像の50倍難しかった。

スクリュー部分がガチャガチャと轟音を出すので、池の上に手こぎボートで浮かぶカップルたちのデートの邪魔にならないか心配になる。というか絶対邪魔になっている。

ごめんよ、という罪悪感でペダルを漕ぐ。

 

ガコガコと音を鳴らすだけでさほど動かないハンドルは私達の手に負えなかった。

子どもを横に乗せたパパさんたちのスワンは驚くほど早い。

私達が他の船と、鍋の中の白玉団子のようにくっついては離れて…を繰り返す間に私達の横を、親子を乗せたスワンが何台も通り過ぎる。

キッズはみな船長の顔立ちでスワンから身を乗り出し、私達に手をふってくれた。

めちゃくちゃかわいかった。

 

 

「もうそろそろ戻り始めないと帰れなくなりそうじゃない?」

あまりの操作性の悪さに恐怖を覚え、早速帰還を試みる私達だったが、時計を見るとまだ乗り場を離れて5分ほどしか経過していなかった。安堵と疲労と落胆が混ざった笑いが漏れた。

 

15分を経過したころ、なるほどようやく私達もスワンちゃんと意思の疎通が取れるようになり、動画を回す余裕が生まれた。が、私達はスマホ動画撮影スキルも持ち合わせていなかった。さらっと「スワンボート乗ってるよ~」という旨の動画を撮影することができず、何度も画角やカメラワーク、セリフを確認する「ヤラセ」が横行。残り15分は普通に動画撮影に苦戦してあっさりと終わった。

 

 

 

友達が撮影に夢中になっている間、私はペダルを漕ぐのをサボっていたが、友達は動画を取りながらも「はい、漕いで!!手!!!ハンドル!!!」と部活の先輩かと思うような指示を飛ばしてきた。

 

 

 

スワンボートは決して優雅なものではなく、自分ならデートでは絶対に乗りたくないが、人間性をあぶり出す意味ではおすすめできる。

 

桜の季節はもっとボート数も増えて、あの池はボート避け暴れスワンレース場と化すのだろうか。優勝はきっと子ども船長を乗せたパパさんだろうなあ。

 

 

 

全くの余談であるが、以下、自分が幼い頃の朧気な思い出話をする。

 

朝、アニメの放送時間が終わるとテレビ(多分地方局)では「本日のボートレース情報」「けいりん(競輪)情報」が流れていた。我が家は野球やサッカーなどのスポーツ観戦をする家庭ではなかったため、毎日情報が流れるくらいだからボートレースとけいりん(競輪が何かは知らなかった)のほうがメジャーで重要な種目だと思っていた。

 

その後「お悔やみ情報」が流れる。お悔やみが何を意味するのかもわからず、漢字も読めないため「おやみ」と自分では呼んでいた。静かな音楽が流れていた。なんとなくその文字をじっと見つめ、テレビを消し、母親に「おやみ終わったよ~」と告げにいっていた。それが午前9時の合図だったような気がする。

 

特にオチのない話だが、なぜかこの記憶を思い出したので記してみた。